MISTAKE




最近、あいつの様子がおかしい。

『あいつ』とは、高校から付き合いだした『望月 あんず』。

つまり・・・・・・俺の彼女だ。

最初の頃は、はっきり言ってこいつが鬱陶しかった。

なぜならこいつは俺の行く先々に現れ、ついには俺のバイト先まで

現れて終いにはバイトするようになってしまった。

(まっ、その訳は後になって分るんだが・・・・・・。)

だけど、こいつと接している内に段々色んな面が見えてきた。

いつも元気で、頑張り屋で負けず嫌いでそれでいて人に優しい・・・・・

俺が惹かれるのは時間の問題だった。

こいつと付き合うまでには、色々あったが無事俺はあんずを手に入れる事が出来た。

そして、同じ大学に進学してつい最近までは他人がうらやむほどの仲だった。

けれど、最近あいつは俺を避けているような気がする。

いつもなら、講義が終わるとあいつの方から「篤、一緒に帰ろう!!!」と言って来るのだが姿を現さない。

それ所かあいつを構内で見かける事さえない。

携帯に電話しても「今、忙しいから後で!!!」とか言って、結局電話はかかってこない。

デートの約束を取り付けようとしても「用事があるから!!!」と言って断られる。

俺の頭の中に1番考えたくない事が浮かんでくる。

『他に男でも出来たか!?』

そんな訳ねぇと思いつつも不安は広がる一方で、まだ構内にいるであろう

あいつを探しに走り出した。





ハアハア・・・・

息が苦しい・・・・。こんなに走ったのは何年振りだ・・・・?

(ちっ、ここにも居ねえ・・・・)

舌打ちしながら、あいつが居そうな所を手当たり次第探して
みるが姿は見当たらなかった。

「ちくしょう!!!あんず、どこにいやがるんだ!?」

思わず声を荒げる俺に学生達の目が一気に俺に注がれる。

だが、今はそんな事に気にかけてる暇はねぇ。

あんずを探し出して、話を聞くのが先決だ。

乱れた呼吸を整えながら、ふと視線を移動させるとそこには俺が

ずっと探し求めていたあんずの姿があった。

「あん・・・・。」

走り出そうとして思わず立ち止まる。

そこには、あんずの他に男の影があった。

背が高く安っぽそうな服を着て、見るからに軽そうな男だ。

(まさか、あいつが・・・・あんずの新しい男か!?)

冗談じゃねぇ、あいつは俺の女だ!!!

いてもたってもいられなくて、ズンズンと2人が居る所まで歩いてく。

その時の俺の顔は鬼のような顔をしていたに違いない。

「おい、テメェ!!!こいつは俺の女だ!!!手ぇ、出すんじゃねぇ!!!」

そいつの胸倉を掴んで、ギリリと睨みつける。

「篤!?」

あんずは、突然の俺の登場に面を喰らったみたいで

思いっきり目を見開いて突っ立っている。

「おぉ、怖い!!!君はひょっとしてあんずちゃんの彼氏の周防くんかい?」

そいつはおどけながら俺の手をパンと払った。

「あんずちゃんだぁ?気安く呼ぶんじゃねぇよ!!!」

再びそいつの胸倉を掴もうとした時、あんずが俺の腕を掴んだ。

「やめて、篤!!!一之瀬さんに乱暴しないで!!!」

泣きそうな顔のあんずに上げていた腕を下ろす。

久々に見るあんずの顔が泣き顔なんて嫌だからな。

「こいつは一之瀬って言うのか?で、お前は俺よりこの一之瀬っていう男の方が好きな訳だ?」

髪を掻き上げながら、フーっと溜息を吐くとあんずは目をむきながら叫んだ。

「な・・・・何、馬鹿な事言ってるのよ!!!そんな訳ないでしょ!!!」

「嘘つくなよ!!!お前の様子が最近、おかしい事ぐらい知ってるんだ。

お前、俺に隠れてこいつと付き合ってたんじゃないのか!?」

瞬間、頬に衝撃が走る。

叩かれた頬を手で押さえながらあんずを見れば、奇麗なその瞳から涙が零れ落ちていた。

「あんず・・・・・・。」

泣かせたかった訳じゃない。

ただ、俺の傍にずっといてほしかっただけ・・・・・

「あぁ、こりゃ俺の説明が必要だな・・・・。」

一之瀬とか言う男がポリポリ頭を掻きながら口を開く。

「あんたは黙ってろ!!!あんたとは後で話をつける!!!」

「いいから黙って聞け!!!」

眼鏡の奥から放たれる鋭い眼光。

今までの軽そうな気配は全く見られない。

ギンと睨むその迫力に俺は黙り込んでしまった。

「あんずちゃんはね、誰かさんの誕生日プレゼント買う為にずっとバイトしてたんだよ。

俺は、あんずちゃんにバイトを紹介しただけさ。」

その言葉に思わずあんずを見ると、顔を赤くして俯いていた。

俺の誕生日はもうじきだ。

俺は自惚れていいのだろうか?

「ま・・・・まさか、俺の為!?俺の誕生日プレゼント買う為に

ずっとバイトしてて、それで俺に隠してたのか!?」

あんずは恥ずかしそうに顔を上げると頬を膨らませながら一之瀬を見た。

「もう、一之瀬さんったら!!!内緒にしてって言ったじゃないですか!!!」

「ごめん、ごめん。でも、この場合は仕方がないだろう?」

ペロリと舌を出す一之瀬にあんずは仕方なさそうに笑っている。

あんずが俺を避けていた理由は分かった。

それは、全て俺の為。しかし、納得のいかない事が数点ある。

「でも、何であんずは一之瀬・・・・・さんにバイトの紹介を頼んだんだ?

それに何であんたが大学に居るんだ?バイトを紹介しただけならあんたにもう用はないはずだ。」

一之瀬はおもむろにポケットから煙草を取り出すと、ライターで火を点けた。

紫煙が青空に広がってゆく。

「それは、俺がフリーライターで顔が広いから。

で今日、俺がここに居るのはあんずちゃんに会いたかったから♪」

「なっ!?」

思わず声が上がる。

こいつ、今何て言った?『あんずちゃんに会いたかったから♪』だと!?

あんずは俺の彼女だ!!!それを知っていても、あんずに手ぇ出すのか!?

いい度胸してんじゃねぇか・・・・・。やっぱり奴とは一戦交える必要がある!!!

そう思って奴を見ると出口に向かって歩き始めていた。

「おい、こら待て!!!」

「周防くんだっけ?今度、あんずちゃん泣かしたら俺が貰うから!!!」

「テメェ!!!」

「一之瀬さん!!!」

一之瀬はニヤっと笑ったかと思うと、手を上げながらヒラヒラさせると構内から姿を消した。

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

お互いに何から切り出していいのか分からず沈黙が続く。

あんずは顔を赤くしながら俺と視線を合わせようとしない。

「・・・・・おい。そ・・・・その、ありがとな!!!俺の為に、バイトまでしてくれて・・・・。すっげーうれしい!!!」

俺の言葉にあんずはうれしそうに微笑んだ。

俺の大好きな笑顔で・・・・。

もう、長い事この笑顔に出会っていない。

あんずと出会わなかったから無理もないんだけど・・・・・。

「でも、俺を心配させた罪は重い!!!ちゃんと罰は受けてもらうぜ!!!」

「エッ!?」

驚くあんずを強く抱きしめ、可愛らしい唇に口付けた。

 

久々のあんずの温かさと柔らかい唇の感触からか長い間離れる事が出来なかった。

(明日からまた冷やかしのネタだな。それもいいかもな・・・・)

こいつは誰にも渡しはしねぇ・・・・例えそれが神だろうが悪魔だろうが・・・・

望月 あんずは俺の女だ!!!




fin




ま み様から頂いた周防×あんずノベルです♪
きゃーーーーーーーーーー!!!!
初めての頂き物ですよ!!!!すっごい嬉しいです〜♪
私のヘボいあんずちゃんイラストで
こんな萌えなノベルがいただけるとは!
エビで鯛を釣った気分です。

周防君、あんずちゃんにベタボレですね〜。
元気君並の独占欲です。でも実際周防君って嫉妬深そうですよね。
ラストは「放送室ちゅー」に勝るとも劣らない
らぶらぶっぷりで、堪能させていただきました♪悶えました♪
「俺の女だ!!!」なんて♪一度は言われてみたい台詞ですよね〜
しかも、一之瀬さんも出てきてくれはるし♪


まみちゃん、本当にありがとうっ!!!愛してるわっ(←をい)!!!


2002.11.18 あまりに萌えすぎたために挿し絵描いちゃいました。
キスシーンって描くの難しいですね・・・ていうか恥ずかしい・・・





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