*聖夜の奇跡*



 

あなたはサンタクロースを信じますか?

今は信じていなくても子供の頃は信じていませんでしたか?

そして、ここにもサンタクロースを信じている小さい女の子が1人・・・・

このお話はその小さな女の子と聖夜に起こった奇跡のお話です。

 

 

「ジングルベル〜ジングルベル〜、すずがなるぅ〜♪」

小さな女の子が楽しそうに自分の背丈よりも何倍も大きいクリスマスツリーに飾り付けをしている。

その女の子を近くで絶えず優しい瞳で見守っている少年が居た。

「里緒は、本当にクリスマスが好きなんだね。」

「うん!!!だってねぇ〜、サンタさんがりおにクリスマスプレゼントくれるから!!!」

にっこり微笑む里緒につられて涼からも笑みが零れる。

まだ、小さい里緒はこの世にサンタクロースが居ると信じていた。

里緒に毎年プレゼントをくれるのは里緒の父親だという事を知らずに・・・。

「でもな、里緒。サンタさんはいい子の元にしか来ないんだぞ?

里緒はいい子か?」

涼の言葉に飾り付けをしていた里緒の手が止る。

「・・・・りお、いいこじゃない?にんじんさんのこすからわるいこなの?

・・・・なら、りおにんじんさんたべる!!!そうすればサンタさんくるんだよね?」

まん丸の大きな瞳に涙を溜めながら里緒は涼を見上げている。

涼は優しく微笑むとポンと里緒の頭に手を置いた。

「大丈夫、里緒はいい子だよ。僕が保証する!!!ちゃんとサンタさんは

里緒の所にもやってくるよ。」

涼の言葉に安心したのか、里緒の顔がパアーっと輝いてゆく。

クスっと涼は笑うと里緒を肩車した。

「ほら、サンタさんが来る前に飾り付け終わらせるぞ!!!」

「うん!!!!」

こうして、クリスマス・イヴの夜は更けていった・・・・・

 

 

 

夜の11時を回った頃、自室で勉強していた涼は何やら外が騒がしい事に気がついた。

涼がドアを開け、『何だろう?』と部屋の外へと出た瞬間

すごい勢いで何かがぶつかってきた。

「里緒!?」

それは大きな目を真っ赤に腫らした里緒だった。

里緒はそのままターーと階段を駆け降りて行ってしまった。

その後から父と母が駆けてくる。

「父さん母さん、一体何があったの?里緒泣いてたみたいだけど・・・・。」

涼の言葉に父は頭を掻きながらバツの悪そうな顔をした。

「それがな・・・・・里緒にサンタはお父さんだってばれちやってな・・・。

あいつ、眠いの我慢してて今まで起きてたんだよ・・・・」

そう、里緒はどうしてもサンタさんに会いたくて眠いのを我慢してこの時間まで起きていた。

でも、限界が近づいてウトウトした時にドアが開いて

『サンタさんだ!!!』と思ってベッドからガバっと起きてみれば

それはでっかいぬいぐるみを手にした父親だったのだ。

そして、現在に至る訳だが・・・・・

「父さん母さん、僕が何とか里緒にうまく言ってみるよ。」

「そうだな・・・・・。涼ならうまくごまかせるかもしれない。よし、頼んだぞ。」

父にポンと肩を叩かれた涼は頷いて、1階に居る筈の里緒を探すのだ

が辺りはシーンと静まり返っている。

「里緒?」

涼の呼びかけにも反応はない。

どこからか冷たい風が吹いてきて、思わず涼は身を振るわせる。

(どこからか風が吹いている・・・。一体どこから?)

里緒を探しながら風の入り口を見つけた涼の顔からは見る見る血の気が引いていく。

「父さん母さん、里緒が外に出て行った!!!」

「何っ!?」

「僕、里緒を探してくるから父さん達は家にいて!!!

僕が30分経っても帰って来なかったら警察に電話して!!!」

「お・・・おい、涼!!!」

涼は父親の静止も聞かず、飛び出して行った。

 

 

 

すっかり静かになった街中をたった1人の大事な女の子を捜して涼は走る。

それは遭難した時とまるで同じ気持ち・・・・

絶望という闇から希望という光を探す為に・・・・涼は走った。

どれぐらい走っただろう。

随分と家からも遠く離れてしまった。

もうちょっと行くと隣町に入ってしまうぐらい遠くまで来てしまった。

(いくら何でもこんな遠くまでは来ないか・・・・)

涼が来た道を引き返そうとした時、微かだがどこからかすすり泣く声が聞こえてきた。

(まさか、里緒!?)

涼は耳を澄ませながらの泣き声のする方へと走り出した。

だんだん泣き声が大きくなってゆき、

やがて人気のない公園でうずくまっている里緒を発見した。

「里緒!!!」

「りょうにいちゃん!?」

とても心細かったのか里緒は涼を見るなり泣きながらダーと

涼の元へと駆け寄った。

そんな里緒を涼は力いっぱい抱きしめた。

「バカ里緒・・・・・・。心配したんだぞ!!!・・・・・無事で良かった、本当に・・・。」

ホッと一息吐いた涼は屈むと里緒の髪を優しく撫でながら、そっと涙を拭った。

「父さんや母さんが心配してる、家に帰ろう。里緒が家に帰らないと

サンタさんはやって来ないぞ。」

微笑みながら言う涼に、今まで涼にべったりだった里緒がドンと涼

を突き飛ばした。

「うそつき!!!りょうにいちゃんのうそつきーー!!!だって、サンタさんは

パパだもん!!!サンタさんなんかいないんだーー!!!」

くるっと向きを変えると里緒は公園の外へと走り出した。

「待て、里緒!!!」

涼は慌てて追いかけるが、それより早く里緒は車道へと飛び出していた。

この時間、車の通りは少ない筈だが里緒の体が車のライトによって

パアっと照らされた。

車は里緒の目前まで迫っていた。

「里緒、危ない!!!」

涼が車道に飛び出ようとした瞬間、周りがカッと光ったかと

思うとまばゆい光が里緒を包んでいた。

目が慣れてきた涼は、その光景を見て思わず息を呑んだ。

なぜなら、里緒が宙に浮いていたからだ。

正確に言うと、浮いていたのではなく宙に居るサンタクロース

に抱かれていた。真っ赤な鼻のトナカイのソリを引きながら・・・

あまりの出来事に呆然と突っ立ってしまった涼の元へ温かい光に

包まれながら里緒はゆっくりと降りてきた。

「メリークリスマス!!!」

サンタクロースはニコっと笑うと天高く昇っていた。

涼は里緒を抱きながらサンタクロースが消えていた夜空をずっと見つめていた。


 

 

居間のソファでうたた寝をしていた涼は、里緒に風邪を引くからと起こされた。

「涼兄、何かいい夢でも見てたの?」

「エッ!?」

「だって涼兄の顔笑ってたから・・・・」

「そうか・・・・ちょっと懐かしい夢を見てた。・・・・里緒、お前サンタクロースって信じるか?」

「エッ!?何言ってるの、涼兄?

子供じゃないんだし、サンタクロースなんて居る訳ないよ。」

「覚えてないのか・・・・・・。まっ、里緒は気失ってたから無理もないけど・・・。」

「何か言った、涼兄?」

「いや、別に・・・・・。俺はサンタクロース信じるけどな。・・・だけど、

今の俺にとってのサンタクロースは里緒・・・お前だけどな♪」

そう言うと涼は里緒の唇に自分の唇を重ねた。

里緒を助けてくれたサンタへの感謝の想いと共に・・・・・

 

 

 

そして、聖夜の夜・・・・・・どこかでまた奇跡が起こる

 

 

 

 

fin

 

 


まみ様のコメント:
何ですか、こりゃあ〜!!!めちゃくちゃファンタスティックですじゃーー(泣)
何やら書いてる内にこういう話になってしまいました(笑)し・・・・しかも時間が
無くてめちゃくちゃ走り書きです(汗)ご覧の通りいつも以上の駄文です(涙)
ちなみに私の場合、物心ついた時からサンタは
両親だと知っていました・・・・(←何て夢のない子供)




まみ様のサイトでフリー配布されていた涼兄ノベルです。
ときメモクリスマスのベルと同じく、黒背景白字にしてみたのですが
オリジナルのページのマネみたいになってしまいました。。。
まみちゃん、ごめん!

涼兄って子供時代からずーーーーーーーーーーーーっと
里緒ちゃんのこと大事にしてたんでしょうね。
大人になってからの恋愛してる二人も良いですけど、
こういう子供の頃の純粋な気持ちも読んでいてほっこりします。

まみ様、ありがとうございました♪









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